を以てこの学位論文を読むことが出来たのである。一体学位論文というものは普通こんなに退屈しないで読めるものではない。博士の実際家らしい板についた引例や多量の学殖は、後学の徒に学的な野心と刺激とを与えずには置かないだろうと思う。私も亦こういう後学の徒の一人でありたいと願っている。
[#改段]


 3 新明正道編『イデオロギーの系譜学』


 イデオロギー乃至イデオロギー論という言葉は、少なくとも言葉としては随分広く今日は行なわれているようである。沢山の人が口にするということが必ずしもそのことが理解されていることではなく、ましてそのことの理解を進めることでないのは云うまでもないが、併しそういう、言葉が流行るということは、一つの必然性と客観性とがあってのことである。
 一方に於てはマルクス主義の大衆化に伴う社会意識の進歩がマルクス主義的イデオロギー理論を結果し、従来文化哲学や文明批判や又一種の心理学によって取り扱われて来た対象は、今やイデオロギーとして取り上げられる。処が之は、従来のブルジョア社会理論特にブルジョア社会学、の独自の領域を犯すことになるのだから、そこで第二に、ブルジョア社会学は
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