ないような単調な作業でも、農業上の労苦忍耐の前には、日常の茶飯事である。」「日本の農業精神は土に親しみ郷土を愛し奉公の念に満ちている。外国から移し植えられて数十年にもならない日本の現代工業には残念ながらまだ此の種の精神的基礎が出来ていない。」「欧米の工業は資本主義、個人主義下の工業であって、日本の農業精神とは相距ること頗る遠い。」「農業精神が失われずして工業が副業として行なわれる」ことが望ましい。「農魂工才で行かなければいけないのである。」
 之が科学主義工業による、労働力側の能率の良さの根拠である。つまり農民の忍耐力が唯一の根拠だ。そして恐らく、この忍耐力のみが、名目上の高賃金の外見を招き得る唯一のものだろう。処が之は何等「科学」や「科学主義工業」の科学性やと関係のないことだ。科学主義工業は熟練を「科学」によっておきかえた。それでコストは安くなる。だがその代り、更に賃金までも高く見せるためには、この「科学」に農業精神という日本農民のあわれな道徳を補充しなければならぬ、ということになる。
 すると、「大資本の株式会社であると、すぐ資本主義に堕するように思えるが、科学主義工業下の資本は、
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