スだ恐れるのは、之によって逆効果を来たしはしないかという点だけだ。この本のおかげで、ブック・レヴューというもの一般の信用を傷けることになりはしないかが、心配だ。
 模範を示すことは出来ないが、「ブック・レヴュー」というもののサンプルの若干を示すことは出来たかも知れない。「読書法日記」とか「論議」とか「ブック・レヴュー」とか「書評」とかいう類別が、夫々サンプルであり、そうしたサンプルを集めたこの本は、云わばカタローグみたいなものでもあろう。ただ大抵のサンプルは実物よりも良くて他処行きに出来ているものであるが、このサンプルだけは、云わば実物よりも劣っているように思う。つまりブック・レヴューの外交であるこの筆者が、相当の犠牲者である所以である。
「読書法日記」は『日本学芸新聞』にその名で連載したものであり、「ブック・レヴュー」は『唯物論研究』の同欄に載せたものである。「書評」は主に新聞や雑誌に所謂書評として発表されたもの。いずれも特になるべく様式の原型をそのまま保存することにした。サンプルとするためである。「論議」はブック・レヴューに準じたエセイであり、「余論」はブック・レヴューそのものに関
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