オロギーという言葉の意味だが(尤もイデオロギーとは社会の現実の推移から取り残されたやがて亡びねばならぬ意識形態をも意味するが、道徳に就いてのこの意味でのイデオロギー性質も後になって意義を見出すだろう)、社会のこの上部構築としてのイデオロギーの一つが道徳現象だということになるのである。政治・法律・科学・芸術・宗教・それから社会意識、こうした文化乃至意識が夫々イデオロギー形態であるが、道徳はこの諸形態と並ぶ処の一イデオロギーだというのである。
だがここで注意しておかなくてはならぬ点は、こうしたイデオロギーとしての道徳なるものが、他でもない一つの文化領域[#「領域」に傍点]を指しているものだという点である。ではどういう領域かと云うと、すでにヘーゲルが見たように、夫は客観的に見て、社会の習俗やその習俗が制度的な実体となった習俗性(人倫)――家庭とか市民社会とか国家とか――でもあれば、主観的に見て道徳意識のことでもある。それだけではなく例えば法律其の他という領域にもその背後には道徳が横たわっている。だから道徳を一つの領域と見るにしても、それがどういう限界を持った領域なのかは、事実容易に決定し難
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