成立とその社会秩序・社会規範の成立とに前後する古い時代であり、特にギリシア哲学の発生と時期を同じくするらしい。ホメロス的伝説に見られるような諸神の道徳的無秩序を清算して、道徳的秩序を打ち建てねばならなかったということが、ギリシア哲学理論の発生原因の一部分であったとされている。だがここでは秩序は主として自然[#「自然」に傍点](フューシス)として把握されたのであって、法[#「法」に傍点](ノモス)として取り出されたのではなかった。道徳論が自然論から分離し始めたのは、云うまでもなくソフィスト達からであり、彼等は主にアテナイ其の他の都市国家を中心とするヘラス地方(ギリシア)の経済的・政治的・外交的・軍事的な動揺を反映して、自然論に対する懐疑から、道徳に就いての懐疑にまで到達したものである。
この道徳論の発生と共に、ギリシア哲学は著しく観念論的な問題の提出をし始めたことを注意せねばならぬ。道徳そのものは明らかに観念乃至イデオロギーにぞくする部面が著しいから、道徳問題を観念論的な形で提出することには、一等安易な初歩的な必然性が有ったわけだ。ソフィストが有った問題は、それが理論的な範囲にぞくする
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