、一つの総括的な意味を、云い表わしておきたい。――科学は云うまでもなく事物の探究だ。文学も亦この科学的探究を踏み渡った揚句、課題を新たにした事物の探究[#「探究」に傍点]である。処で科学の探究の対象は真理[#「真理」に傍点]と呼ばれる。之に対して、文学の探究の対象が道徳・モラル[#「道徳・モラル」の「・」を除く部分に傍点]なのである。この人間的(実は「自分」の)真理は吾々のムードやマナーの末にまで現われるのだ。かくて道徳・モラルとは、一身上の真理[#「一身上の真理」に傍点]のことだ。
だから道徳とは、丁度科学的真理がそうであるように、常に探究される処のものなのだ。その点から見れば、道徳は与えられた道徳律や善悪のことや一定の限定された領域などのことではない。特に、科学が決して、真理と虚偽との対立を決めるというような妙な形の興味を有つものではないと同じに、何が善で何が悪かというような設問の内を堂々巡りしていることは、道徳の探究の道ではなく、従って又道徳の本義ではないのである。
道徳が自分一身上の鏡に反映された科学的真理であるという意味に於て、道徳は吾々の生活意識[#「生活意識」に傍点]
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