発見するということは、そんなに素手で方法なしに出来るものではない。そしてその方法は社会科学的認識の淵をばモラルにまで飛躍するという機構であり手続きであるのだ。之を抜きにして見出された自己などは、誠に賤しいものだ。
文学とモラルとのこの結びつきを、特別な形で示しているものは、フランスの文学的伝統の一つであるモラリスト[#「モラリスト」に傍点]たちの立場であろう。モラルという文学的な道徳の観念や言葉も、実はこのモラリストのものであったのだ。道徳の倫理学的観念が初めイギリス的乃至ドイツ的であったに対して、モラルという文学的観念は主としてフランスのものだ。処でモラリストの特色の一つが、矢張り「自分」を探究することにあったのを忘れることは出来ない。――E・ブリュンティエール(之はレーニンによると済度すべからざる反動家だが)は、モンテーニュの『エッセー』に就いて言っている、「それは、人が自己を描こうと企てた最初の書物である。自己を並々の人間の一例として考察しつつ、その自己の中に掴みえた発見を以て人類の博物誌を豊富にしようと企てた最初の書物である」(『仏蘭西文学史序説』岩波文庫訳に基く)。モンテ
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