て一歩進めば、もはや観照[#「観照」に傍点]ではなくて事物に対する実際的処置となって了う。
尤も観照とか見るとか視覚とかいうことは何も映画に限ったことではない。絵画・彫塑・写真・舞踊・劇に至るまで、之に基いているわけだが、映画は之を単に動く写真[#「動く写真」に傍点]と考えて見ても、すでに最も具象的な視覚の内容を充たすものだという処に、その特色があるのだ。美術も舞台も夫々固有な芸術的リアリティーを有っている。写真的なものであろうと象徴的なものであろうと、芸術的[#「芸術的」に傍点]リアリティーの分量の如きものには関係があるまい。だがそのことと、美術や舞台が、一般に夫々の視覚的芸術が、空間的時間的、社会的歴史的な本来の現実から、夫々の程度乃至方針に従って、抽象された世界のものであり、従ってこの現実の[#「現実の」に傍点]リアリティーからの夫々の距離での抽象化を持っているという関係とは別だ。つまり芸術的[#「芸術的」に傍点]リアリティーの問題とは別に、現実実在の再生という意味でのリアリティーを考えねばならぬのだが、之を映画について考えて見ると、映画はこの意味で視覚の最もリーヤルな内容を充
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