は学生は可能的な失業者であるのだが、それ故に却って又三年なり六年なりの失業延期の特典の所有者でもあるのである。即ち彼等は例えば中等学校を出てすぐ様失業者の資格を受け取るのを避けるために、更に三年なり六年なりの失業延期をするのだが、それが彼等の専門学校なり大学なりの学生生活になるわけだ。尤も之が、高等教育を受ければもっと良い口があるだろうと考えるからでもあるのは事実だが、それはこの失業延期案を、そういうはかない希望で以て置き換えようとする自己慰安の方法に過ぎないのであって、大学専門学校出身者の方が中等学校卒業生より却って就職率が低いということは、相当世間に徹底している事実なのだ。
で今日の学生、特に大学の学生などの可なりの部分は、意識的無意識的に、失業の代りに学生生活をしているとさえ云って良い。そうすれば学生は一つの立派な職業[#「職業」に傍点]で、之によって学生は社会から一定の身分に相応する待遇をだけ期待する権限を受け取ることになる。
例の書生は併し決して社会の一隅を占めるこのような職業人ではなかった。彼等は云わば計り知れない無制限な可能性を蔵した限定し難い茫漠とした層であった。之
前へ
次へ
全451ページ中250ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング