夫は学生が「自分」を失うことだ。学生問題が消えて無くなることだ。

   三 学生はなぜカフェーから閉め出されるか[#この行はゴシック体]

 暫く昔、日本で学生が書生と呼ばれていた頃は、社会的に学生が可なり優遇されていた時期であった。なる程貧乏な学生(「苦学生」・「貧書生」)は今より多かったらしいし、又書生一般の生活程度も当時の水準に較べて今よりもずっと低くて、身なりや日常生活も今の学生よりはしみったれていたらしい。併しそれにも拘らず、彼等書生は書生であるとして世間に立派に通用していたのであって、書生流[#「書生流」に傍点]は一部の社会の一個独自な生活理想を示す優秀な風俗でさえあったのだ。
 今の学生は一面から云えば寧ろ社会的に一人前になっていて、表面上は世間並みの人間と昔程の相違を有っていないが、それは実はそれだけ学生が社会に同化しなければならない弱みを意味するので、彼等がすでにその弊衣破帽式生活に自信を失って了った証拠なのである。現在の学生は他の階級や身分や職業に較べれば依然幾種かの特典をもってはいるが、根本的な点では、昔の書生に較べて著しく社会的に不遇になっている。大人びたとも
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