いう点だけが只一つ心配なのである。それも、文部大臣がスポーツの世話を焼くだけの役目では、あまりに気の毒だと思う同情の心からなのである。
 私は子供の頃、政教分離ということを聞いてなる程と思ったものであるが、更に宗教関係や教育取締は文部省で、神社関係や犯罪取締は内務省の所管だということを知って、その組織的な分類法に敬服したものだった。処がこの頃では、どうもこの点に就いて段々懐疑的になって来たようである。
 何にせよ、教育の警察化[#「教育の警察化」に傍点]ということはあまり柄の良いものではない。例えば中学校以上の入学者全部を、片端から指紋を取ってやろうというようなある筋の最近の提案は、職業的サディストにとっては中々面白い痛快なイデーであるが、「社会風教」の上からは、あまり愉快なイデーではないようである。

   三、墳墓発掘

 四月二十六日の新聞を見ると、某医専教授が、人夫を使って鎌倉の百八矢倉という史跡を暴き、五輪の塔を窃取して、荷車にのせて持って帰って、自分の邸宅の置石にしていた、ということが出ている。之は中々風変りな面白い犯罪だなと思って見ていると、確かに大分風変りな犯罪であるこ
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