全く驚くべき事実である。この事実に較べたら、今後どんなに無学で白痴のような人格者が、大学教授になろうと、数等増しなわけである。併し之がうまく行って教育の倫理化[#「倫理化」に傍点]が阻止されるとなると、役に立たない人格者ばかりが卒業して、当局が気にしている「高等遊民」の数ばかりが殖えることは必然だが、それはどうなるというのだろうか。――それから徳育というのはどうも国史教育[#「国史教育」に傍点]のことであるらしい。而も国史の「単なる史実」を教授するに止まらず、「日本精神闡明のため」の教授をすることをいうのである。「単なる史実」以外のもの、即ち史実でない[#「でない」に傍点]ものを教えることが、徳育と名づけられる処の国史教育だそうである。処で「修身の教授を改善しかつ各学科目の教授に当りて一層徳育に留意する」とも云っているから、各科目を通じて忠実でないことを、一般に事実でないことを、教えることにするらしい。
 教育を倫理化することは当局の勝手かも知れない。併し科学[#「科学」に傍点]がそういう具合に安々と教育化されるかどうかは、当分当局の勝手では決るまい。真理はもっと皮肉に出来ているのだ。
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