律もあるかも知れないが、治安維持法に限って、そんな遊んでいる法律ではない。私は法律というものを、一種の道具と思っているが、道具というものは、使われれば使われる程、進歩するものである。この法律は制定されてからそんなに年数の立つものではないに拘らず、実に急速な進歩をするので有名であるが、それがどんなに多く使われる法律であるかということ、即ちそれがどんなに重宝な法律であるかということは、この進歩のテンポの旺盛な点から測定出来る。
 最近一遍「改正」された治安維持法が、この頃再び、司法省の原案に基いて「改正」されそうである。最初の該法文は、「国体の変革又は私有財産の否認」を企てるものといった具合に、国体と私有財産制とを同一視させないとも限らないような、それ自身危険な、自分自身がこの法文に引っ懸かることを告白しそうな、性質のものだったのが、第一次の改正によって、二つの文章に分離された。国体の変革は私有財産の否認よりも重大だったからである。これによって吾々は、国体が私有財産制とは無関係であるということを、即ち又、国体の変革を須《もち》いずして私有財産の一種の否認も存在し得なくはないということを、教
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