介所の手を通じて、並に就職口を内地に見付けるために帰って来たというのである。
十八人の内の一人が云っている、「ホテルの仕事が全然私達の個性(筆者註・「人格」の間違いだろう)を傷けて仕舞ったんです、まあいって見れば宿屋のお女中さんと同じなんです、私達が向うへ着いたのが一月の十八日、ホテルは二十五日に開店となって或る日、向うの偉い人達を呼んで盛大なお祝いがホテルにあったんですが、その夜始めておそくまで全部お酒のお相手をさせられたのです、サービスといっても、お客の御相談、御接待役位にしか考えていない私達がビックリしたのも当然ですわ……」(東朝五月四日夕刊)。
ホテルのサービスガール、之を訳せば「宿屋のお女中」に外ならない筈ではないか。だが一寸待って欲しい、他の一人が云っている「経営者水谷さんと職業紹介所と私達と三方に認識不足があったわけです、でも私達が夢を抱いていたと責められても、紹介所を通じていわれたのが、帝国ホテルより大きなホテルで、そこで事務員店員、私達がそれだけの想像をしても仕方が無いでしょう、紹介所では今になって水谷さんが余りに大きくいいすぎたといっていますが、満州ではああいう
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