すのであったが、増々皆んなはその方にばかり瞳を集めていて、ハチ公のことはもうスッカリ忘れて了っているように見えるのであった。
彼が驚いたことには、幕が降りて現われたものは彼自身の銅像だったのである。皆んなは一緒にこの銅像に向って歓呼した。それがすむと本人のハチ公が銅像の側に引っぱり出された。そしてもう一遍皆んなが歓呼した。併し皆んなの瞳が集められているのは彼の銅像に対してであって、決してハチ公に向ってではない。
ハチ公はつき落されたような失望と屈辱とを一遍に感じた。観衆の対手にしているのは彼ではなくて、彼よりもずっと大きくて立派な彼の銅像だったのだ。この銅像が出来ればもう自分はいらないものだとすると、ひょっとして自分は殺されるのではないかという不安さえが、急に彼を襲い始めた。彼は急いで駅の外へ飛び出した。するとそこで自分のブロマイドやハチ公煎餅やハチ公チョコレートというものを売っているのに出会した。処が今日は子供達までがハチ公などに見向きもしないで、このハチ公煎餅やハチ公チョコレートに気を取られている。
ハチ公は自分が何か魂を搾取される手術でも受けたように、自分と自分の持っている
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