君である。
 わが国の最も代表的な国粋文学が、元来ならば申し分ない精神作興の効果を挙げる筈の処を、有閑不良マダム達のおかげで、全く逆の効果を生むようにされて了ったことは、独り紫式部学会の人々や劇場関係の人々、そればかりではない天下の全輿論が、深く遺憾とするばかりではなく、恐らく当局自身残念がっていることだろうと思う。何等かの道徳的効果を挙げようという思想的動機から発動した風紀警察自身も、ここまで来ると、却って思想警察と抵触することとなる。困難なのは風紀警察であり、之を更に困難にするものは思想警察なる哉である。
[#地から1字上げ](一九三四・一)
[#改段]


 博士ダンピングへ

   一、医学博士の家元制度

 下関の或る開業医が、長崎医科大学学長を相手取って、自分が同大学へ提出しておいた学位請求論文を審査すべからずという仮処分方を、裁判所に申請した事件があった。結果に於て同医師の申請は却下されたが、この風変りの訴訟に対して世間の注意深い人達は一寸奇異の感を懐かざるを得なかっただろう。「博士濫造」という廉でかねがね世間から胡散臭いものと見られている医学博士に関することだから、どう
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