ら、社会的にもっと大物の、而も世間で相当知れ渡っている事実である、政界や財界の名士の賭博を、なぜ検挙しないのかと、警視庁にねじ込んだ事実さえある。又しても警察当局の検挙行為自身が批判の対象にされたわけで、これによって警察の道徳的な色揚げは、又少し剥げかけたように見える。
 風紀警察から出発した警察権の道徳的な色揚げは、以上のように、只ではどうも理想的に甘く行かなかったが、之を思想警察と結び付ければ、もっと尤もらしくなるだろう。文壇の堂々たる大家も単なる風紀警察の下に、不良少年係りの手で挙げられたのは少々気の毒だったが、今度はそうは行かない。保安部の手によって風紀警察が発動し始めたのである。
 新劇場の面々が、「戯曲源氏物語」を上演することに決定して、入場券も売り、舞台稽古も怠りない頃、当局は突然上演禁止の旨を通達した。その理由は、事宮廷のことに関するのと、それが又おのずから上流社会の風紀壊乱を示すことになるのが重ねて悪いのとの、大体二つであるらしい。良家の有閑不良マダムの摘発は、ここで再び生きて来たわけで、併し今度迷惑したのは、ダンス教師ではなくて、不良ダンス教師に見立てられた光源氏の
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