は「高等」な社会人であるが、特高課の対象は之に反して下等[#「下等」に傍点]な社会人なのだ。ただ夫だけだ。
 高等警察の廃止は政党の凋落を物語る、警察は政党が凋落したものだから、その××であった高等課を振り捨てるのだ、と云われている。それはそうだ。併しそれは同時に警察の特高化を、思想憲兵化を、物語っている。丁度政党や官僚や、軍閥が或る一点に向って集中して行くように警察行政も亦この一点に向って集中して行くのであって、高等警察の廃止も警察のそうした集中過程の一産物に過ぎないのである。

   二、自然現象と社会現象

 現在で最も大きな問題は何と云っても東北地方の「凶作」飢饉である。新聞は毎日写真入りで東北地方農民の耐え難い生活を報道している。新聞は或いは宣伝のためにこの問題に興味を有っているのかも知れないが、とにかく新聞の「東北凶作救済運動」は天下の輿論を動かし、センセーションを捲き起こすのに成功したと云わねばなるまい。特に農村の娘が酌婦・芸妓・娼妓・女工・女給・女中などとして安売りされるということが、少なからず世間の男や女の興味を惹いたらしい。子女の安売は日本では何も今日に始まったことではなく、又必ずしも農村だけに限られている現象でもないのだが、農民のただの凶作やただの貧困ではジャーナリスティクに興味がないので、世間では之を人身売買や芝居の子役の形に直して、問題に色艶をつけようと力めているらしい。
 この笛に合わせて起ち上ったものは、各種の婦人団体であって、愛国婦人会やキリスト教婦人矯風会、仏教女子青年会、などの会員は一堂に会して全国的な一大運動を起こすことになった。一体婦人団体というものが社会問題に対してどんなにシニカルで、従って時として問題が女や子供のことになると如何に突然とセンチメンタルになるものかということは、私が関西風害に就いて前にも云ったことだが、ここでも亦反覆して之を証明することが出来る。だが私は之を決して無意味だとか、まして悪いとか云うのではない。無論非常に立派なことなのだ。
 だがこの婦人達の或る種の錯覚は是非とも訂正しておかなくては都合が悪い。農村の子女が安売されると云っても、無論この婦人達は女子供の売価が安い[#「安い」に傍点]ことに同情[#「同情」に傍点]しているのではない。女を売買するということが、不道徳[#「不道徳」に傍点]で、この不道徳
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