結社をなした疑ある者が、住処不定であったり変名や偽名を用いる場合は、六十日乃至百二十日の拘留を申し渡たされるというのである。罪証湮滅や逃亡の恐れある被疑者も亦無論そうである。之によると住処を調べたりペンネームを調べたりするには少くとも六十日はかかる見込みらしい。だが問題の犯罪が犯罪であるだけに、取り調べに慎重な落ち付きが必要だろうから、二月や三月の拘留は、国民として、国体の尊厳のために我慢して然るべきものではないか。
「保護観察」というのは、之も亦刑法上の問題であって、幼稚園の園児や小学校の児童に就いての規定だと思ってはならない。執行猶予や起訴保留(?)になった治維法の犯人は、必要に応じて、保護者に引き渡されることになるということなのである。保護者に引き渡されない場合は、寺や教会や保護団体や病院におあずけになるのである。お寺や教会に渡すということはどういう意味なのか判らないが、病院に引き渡すという処を見ると、あまり縁起のいい規定ではないようだ。併し万事は国体の尊厳を維持するためだ、国民に文句はない筈である。
三、荒木陸相の流感以後
今年の流行性感冒は非常に悪質で、私なども一カ月も寝ていたために、前号の「社会時評」の原稿を書きそびれて了ったが、そんな小さなことはどうでもいいが、荒木陸相がこの同じ風邪で大臣を止めなければならぬというような大事件を惹き起したということの方が、この感冒の歴史的意義をなしている。
尤も一方に於て当時の新聞紙の報じる処によると、荒木陸相は昨年末、例の内政会議終了の前後から辞意を決していたのだそうで、当時の林教育総監や真崎軍事参議官やがその前後策を凝議していたということだ。これで見るとこの歴史はただの流行性感冒だけでは説明されないのかも知れないけれども。
とにかく今まで猫のように大人しかった政党、例のロンドン条約問題で青年将校達を怒らせた若槻総裁の言論などを除けば、軍部の云うことに対しては今までグーの音も出なかった政友会や民政党が、今度の議会で、どう潮時を見計らったのか、猛然として軍部に喰ってかかり始めた。第一に、曽つて極めて唐突に発表された軍民離間に関する声明書に就いて、衆議院ではその動機を説明しろと当局を追求し始めた。荒木陸相に代った林新陸相と大角海相とはそこで、軍民離間を強調した内容の印刷物を配布した者があったから、容易なら
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