社会時評
戸坂潤
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)強《あなが》ち
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四十一|口《ふり》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]
×:伏せ字
(例)××られやすい
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目次
思想問題恐怖症
自由主義の悲劇面
転向万歳
倫理化時代
減刑運動の効果
世人の顰蹙
林檎が起した波紋
小学校校長のために
博士ダンピングへ
荒木陸相の流感以後
スポーツマンシップとマネージャーシップ
失望したハチ公
武部学長・投書・メリケン
農村問題・寄付行為其他
三位一体の改組その他
罷業不安時代
パンフレット事件及び風害対策
高等警察及び冷害対策
試験地獄礼讃
免職教授列伝
ギャング狩り
膨脹するわが日本
大学・官吏・警察
八大政綱の弁護
[#改丁]
思想問題恐怖症
一、満州サービスガール
満州国が独立したのを一等喜んだものの内には、今年の大学専門学校卒業生達を数えなければならぬ。何しろ大口二百名の満州国官吏を採用するというので、文部省へだったか又は直接に各大学専門学校へだったか、(そこの区別は一寸ゴタゴタがあったようだが)、人物・身体・学業三拍子揃った粒よりの「有為な」青年の推薦方を依頼して来たのである。官公立と私立とから平等に採用して欲しいというような、先の先まで考えた就職者側の注文もあった。私は当時、帝大卒業生などは人物・身体・の二条件に於ては遠く拓植大学卒業生などに及ばないから、まず官立一私立二ぐらいの割合が公平だろうと思っていたのだが。
さて有為な青年は仲々多いものと見えて、学校当局の折紙づきの卒業生が二千名も受験したそうである。受験場は東京・京都・仙台・福岡・京城の五カ処だから、まずオール日本青年代表の選定という慨がないでもない。――処が有為な青年は実の処、又案外少ないものらしく、わずかに十七名(いずれも帝大出身)だけが選定されたに過ぎなかったのである。あまり出鱈目だというのでわざわざ満州国にまで押し渡って先方の当局にねじ込んだり、内地の当局に抗議を申し込んだりした青年もいたそうである。併し何と云
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