オ得なかったからである。処が生命現象、有機体を対象とする生物学になれば、愈々その精密性を失うものだと見られている。生命現象は極めて高度な複雑な物質の特殊な属性だから、その連関の研究はなおまだ現象的な観点に止まらざるを得ないのはやむを得ない。だが困難の原因はそれだけではないので、ここに新しく登場する個体という範疇があるからである。
物理学乃至化学のプロパーな場合には、個体という観念は何等科学的な範疇ではない。物理現象や化学現象は一つ一つの個体に単位をおく現象ではなかったからだ。物理学や化学が個体という範疇を必要とする場合は天文学や地理学となる。そこでは個々の名をつけられた物体が(もはや単なる物質や物質塊ではない)、太陽や火星や地球が、問題となる。(思うにかかる物理的、無機的、個体を個体なりに最も抽象的に一般的にテーマとするのはトポロギーなる幾何学だろう。)処が生物学になるとこの個体がその個体らしい特色を前提として登場して来る。生命現象とは之である。ここに生物学がすぐ様には精密になり得ず、又有機体が無機的自然と区別される標識も発見されるのである。
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