識という名称は意識という概念から離脱し、従って意識として理解されるべき性格[#「性格」に傍点]を云い表わすことを止めるであろう。それは死語となる。さてこの場合変容は何処まで許され、何処から先は禁じられるか。概念は今云った通り理解されて――命名されて――成り立っている、概念の成立には性格の理解、命名の理由が潜んでいた。概念は常にその成立の動機[#「動機」に傍点]に束縛されている。それであるから概念が一方に於て一定の性格を、又他方に於て一定の名称を手放さないためには、この概念は常にその成立の動機に忠実[#「忠実」に傍点]でなくてはならない。故にこの動機を忘却[#「忘却」に傍点]する時その名称の変容はその点に於て禁止される必要がある(この禁止を無視することは表象散漫の症状となって現われる――個人的にも社会的にも。例えば名称の戯画的適用)。又吾々が概念を行使する場合も亦、概念の動機を忘却することは許されない。もしそうでないとしたならば、例えば吾々は悪しき意味での抽象的概念[#「抽象的概念」に傍点]を所有することになるであろう。その成立の地盤との連関――それが動機である――を省ることなくして勝手
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