方が必要であるであろう。このような取り扱い方を吾々は存在論[#「存在論」に傍点]と呼ぶことが出来る。何となれば、茲に必要であるのは存在の性格を取り扱い得る取り扱い方であるのであるから。
 空間概念の性格――存在としての性格(Dacharakter)――を最もよく云い表わす言葉は世界[#「世界」に傍点]である。空間概念はその性格の上から世界概念にぞくすと云うことが出来る。之を世界性として理解する時、例えば之を表象と考えたり又は論理的範疇として片づけたり又は単なる形相と云い放ったりすることが、如何に見当を逸したことであったかを吾々は最も直接に覚ることが出来るであろう。吾々がその内に住み、それと交渉し、それと共にあるもの、そのようなものを吾々は世界として理解する。かかる世界の概念の一つが即ち空間なのである。それ故始めて吾々はそのような空間概念に基いて日常生活を営むことが出来るのでなければならない。空間は或る一定の専門的な問題に於て始めて成立する概念ではなくして、世界がそうあると同じく、常に不断に与えられている概念に過ぎない。ただそれであるからこそ却って、吾々がそれを把握するには一つの発見が必
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