[#「存在」に傍点](Dasein)であるのか。或いは又両者の総和であるのか。何となれば一般的なる原理に対する個別的なる経験が事実[#「事実」に傍点]であり、之とは異って、無いものに対する在ることが存在[#「存在」に傍点]であるのであって、仮に両者が常に結び付いているにしても、両者は全く動機を異にした二つの概念であるからである。もしこの区別を承認するならば、一方の除外は必ずしも他方の除外を伴うことを保証しない。処でこの区別をフッセルルがどう与えているかを吾々は知ることが出来ないように思われる。実在と呼び存在と名づけているものも結局事実[#「事実」に傍点]を指すに外ならぬように見える**。それ故実在の除外は個別的な事実[#「事実」に傍点]の除外を意味し、この還元によって得られるものは本質[#「本質」に傍点]である――形相的還元[#「形相的還元」に傍点]。還元は新しい性格を導き入れる筈であったが、この還元によって得られる性格は可能性[#「可能性」に傍点]である。形相的還元に依って可能性の性格は実在の――実は事実の――性格を優越する。けれども吾々はこのような還元にはあまり関心を有たないで済む
前へ
次へ
全124ページ中106ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング