ならない。又円錐曲線の中点、直径、平行、方向、等の概念も許される。それ故類同幾何学は量的であると云う外はない。ライプニツの位置解析も之に準じて観察してよいと思う。さて併し吾々は茲に至って計量幾何学とは異る処の量的幾何学が少くとも一つは存在するということを識った。今両者を区別するものは座標に依るか否かである。併し縦え座標を用いないにしても量的幾何学は解析的でないのではない。クラインの云ったように(前を見よ)解析的とは必ずしも座標的であることを意味しない。併し又すでにその場合明らかにしたように之が座標と無関係であるというのではない。であるから座標を含むか否かは解析に対して根本的な区別ではない。計量に対する根本的な区別とはならない。それ故又量的幾何学の――それは計量を含むものと定義されてある――根本的な区別とはならない。私は量的幾何学を更に分類する理由を発見しない。
之に反して質的幾何学の定義は消極的に――計量を含まない[#「ない」に傍点]幾何学として――与えられてある。之を検べて見なければならない。ケーリが凡ての幾何学は射影幾何学であると云ったが、射影幾何学が又計量幾何学を含むならばその限りに於て量的であると考えられないでもない。射影幾何学に於ても座標があるではないかというであろう。併しながら計量幾何学の座標と射影幾何学の座標――仮に射影的座標と呼ぶ――とは本質的に区別されなければならぬ。今数とは独立な二つの幾何学的構成によって一直線上に点の位置を決定することを夫々和及び積と定義すれば、任意の単位をとる時、この直線上の或る一点を除いた凡ての点は、この和及び積に関して一つの領域(field)をなすと考えられる。然るに他方に於て数体系も同じ領域を造る数から成り立ち得るから、数体系は又一つの領域と考えられる。それ故もし直線上の点の領域と数の領域とを一対一の関係―― isomorphie の関係――に置くならば、直線上のかの一点を除いた凡ての点を数に対応せしめて之を数と全く同様に論じることが出来る筈である。之を射影幾何学に於ては非等質的座標という。今若し除かれてあった特異点――無窮遠点――の特異性を取り去るためには各々の点に夫々一双の数を対応せしめるならば、直線上の凡ての点は例外なく数の一双と対応することが出来る。之を等質的座標という。さてこのような射影的座標はデカルトの座標と同じではない。何となれば後者に於ては数と要素とが幾何学的な乃至は他の如何なる数学に固有な手続きにも依ることなくして直接に対応する。数と直線との対応に於て吾々が先験的に許さねばならぬものはこのような直接さである。然るに前者に於ては対応は決してこのような意味に於て直接ではない。多くの数学者が注意するようにそれが一定の幾何学的な構成を通じて始めて持ち来されるのであるからその対応は間接であると云わなければならない。処が向に計量は後者の場合の如き直接の対応に外ならぬことが明らかとなっている。従って前者の対応は質的となる。射影的座標は質的である。射影幾何学が計量幾何学を含むとは唯だこの質的な座標を通じてのみであると思う。然るにポアンカレは射影幾何学が直線の概念に基く故に質的ではないという、「計量によらない限り、即ち尺度と呼ばれる道具を線の上に滑らせるのによらない限り、その線を直線と確定することは出来ない。尺度とはとりも直さず計量の道具なのである」(〔Dernie`re Pense'e, p. 58〕)。即ち直線は計量によって始めて曲線から区別されるからして量的であると主張する。併し明らかに射影幾何学は直線と曲線とを区別して特に直線をその基礎に置くのではない。茲に必要なものは直線ではなくして異なる線である。二点によって一義的に決定される要素之が線である。併し又吾々はこの線を特に曲線と考える理由を何処にも持っていない。それは或る意味で矢張り直線と考えられる理由はあるであろう。けれどもその故に量的であるのではない。このようにして射影幾何学が量的と考えられる根拠は何れも薄弱である。射影幾何学は質的である。それ故之は又純粋幾何学或いは総合幾何学の名を以て呼ばれているのである。
向に明らかにしたように位置解析(Topologie)は連続の公理の上に立つ。然るに又其の後に連続の公理の導入が計量幾何学の成立する一つの条件であることも明らかとなっている。従って位置解析は量的であると考えられるかも知れない。併しながら私は連続の公理の導入が何故計量幾何学の成立となったかをもう一遍思い出して見る必要がある。即ち合同の公理が数体系の導入を意味し従って数連続体の導入を意味したが、この数連続体の導入を云い表わすものとして、そして唯だその限りに於て、連続の公理が見出されたのであった。それ故この場合の連続の
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