知識」は、実はやがてこの夫々の実在部分が一つの客観的な体統[#「体統」に傍点]をなすことに照応して、諸知識そのものの間にこの体統を諸知識体系[#「諸知識体系」に傍点]として反映するようになる。諸知識は実在の体統に照応すべく体系づけられ組織的に組み合わされる。之は知識そのものの本性上の約束から云って、極めて当然なことだったのである。だが恰もこの知識の組織(Wissen−Schaft)が、「科学」(乃至学問)の名を持つものだったのである。――科学を単なる知識から区別する処の科学らしさ=科学性を、ヘーゲルなどはだからその体系[#「体系」に傍点]の内に求めている*。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
* フィヒテは之に反して、学問(科学)の特色を体系よりも寧ろ、知る[#「知る」に傍点](Wissen)ことに、知ることの確実さ[#「確実さ」に傍点](Gewiss)に求めた。即ち彼によれば科学の確実さは、実在との関係によって与えられるのではなくて、意識の主観的な心組みの確かさ如何によるわけである。――ではその体系がどうやって成り立つか、に就いては様々な意見がある。例えば科学体系がシムボル
前へ 次へ
全322ページ中90ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング