律法の博士達や「学者」のものでもない。教えや道としての学問は権威[#「権威」に傍点]がなくてはならぬと考えられた。哲学(中世では一切の学問が哲学と呼ばれる――光学さえが)は神学の婢女だというスローガンは有名であるが、云うまでもなく之は、学問が宗教の一部分となるのでなければ社会的存在を許されない、ということだった。「権威」のないものは学問ではあり得ないというのだ。ヨーロッパ中世末期の哲学が、神学のこのカトリック的権威から独立しそうにし始めたので、そこで教会はこのスローガンを選ばなければならなかったのである。
だが今日の学問は云うまでもなく、芸術一般からも道徳的教説や宗教的信条からも区別されている。そしてその故にこそ却って一つの独立な権威[#「独立な権威」に傍点]を有つものだ、ということになっている。この学問的権威の独立性は、強権によるものでもなければ決議によるものでもなく、又修辞的説得力に基くのでもない。社会秩序に順応したり君臨したりするのでもなく、又多数決や話術やによるのでもないということが、近世以来の現代的学問の、独立性と権威だと信じられている。無論、単に天才や何等かの人間の創造す
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