於ける哲学一般(キリスト教哲学)の根柢をなすのだが、之へつながってその先駆となるものが、この史学乃至世界史であった。
 史学乃至歴史科学と、歴史哲学乃至哲学一般との関係は、だから極めて密接である理由がある。そしてこの点は今日でも依然として重大な意義を持っている。近代の科学的な歴史学はその経験的な事実の考証に基くという実証的な建前から、或るものは意識的に哲学的な夾雑物を斥けようとするのであるが(「本来あった通り」を記述する――L・ランケ、又バックルやテーヌの場合)、それとても夫々一個の哲学的な立脚点を想定せざるを得ない。そして大切なことには、夫々の哲学的な立場の相違によって、歴史記述の方法と従ってその成果とが、銘々全く異っていたり相反していたりせざるを得ないことであり(各種の精神史観・心理史観・「第三史観」・そして唯物史観)、そればかりでなく、時代と共に変るこの記述方法自身の変遷が極めて著しいのである(ホメロス風の詩的記述・「春秋」「通鑑」風の教育的記述・史料編纂的なもの・実証主義的なもの・「哲学的」なもの・等々*)。こういうことは自然科学の場合には、顕著な形では決して現われない事情なの
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