る程沢山に露骨に含んでいる。で、社会科学[#「社会科学」に傍点]はその実質に於て歴史科学[#「歴史科学」に傍点]と別なものではあり得ない。社会科学を所謂社会学[#「社会学」に傍点]から区別出来るという程度に於ては、社会科学一般は歴史科学一般と区別されることも出来、又歴史科学と史学(乃至歴史学)との区別さえも不可能ではないだろうが、そういう細かいことは後の機会に譲ることとしよう。今は社会科学を実質的に歴史科学と同じものと想定しておいていい。
 この社会科学乃至歴史科学は、今日に至るまで、自然科学以上に哲学と密接な連関を有っている。普通ギリシア哲学の起源、即ちギリシアの自然哲学の起源は、ギリシア神話(エーゲ海やエジプトから来た)の批判としてであったと云われるが、併しホメロスの名で呼ばれる叙事詩神話は、云うまでもなく歴史の起源でもあったのである。ギリシアに於ける民族的史学はギリシア=ローマのポリュビオスに至って世界史[#「世界史」に傍点]の段階に昇るが、併し之が同時に歴史哲学[#「歴史哲学」に傍点]の始めともなる。歴史哲学はヘブライ思想の系統を引いて(例えば聖アウグスティヌス)、やがて中世に
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