フ物理学的な意味だろう。だが生物[#「生物」に傍点]は之とは別な意味に於て、個体の性質を持っている。生物の個体は物理的にはいくらでも分割出来る。細胞は更に原形質や核や染色体や細胞膜其の他に分割できる、等々。だがそれにも拘らず、之は生物学的に一個の不可分な個体、オルガニズム[#「オルガニズム」に傍点]なのである。オルガニズムに於て不可分と考えられるものは、もはや単なる物質乃至物体ではなくて、高度に発達[#「発達」に傍点]した物質の合成による生命[#「生命」に傍点]なのだった。
 生命の概念に就いては、機械論[#「機械論」に傍点]と生気論[#「生気論」に傍点]との対立が、或いは非全体説と全体説[#「全体説」に傍点]との対立が、有名であるが、この矛盾の克服は全く、生命現象に対する唯物弁証法の役割による以外に道を残さない。ここでも亦、神秘説と機械論とを止揚統一するものは自然弁証法なのである*。元来生命それ自身がディアレクティッシュなものなので、新陳代謝や疾病治療や、出生死亡等の現象が、常識的に之を告げている。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
* この点に就いては拙稿「生物学論」(岩
前へ 次へ
全322ページ中287ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング