こうだとして、今特に科学の大衆性[#「大衆性」に傍点]に就いて分析しておく必要がある。というのは、科学は社会に於けるイデオロギー・上部構造であったが、この社会的所産[#「所産」に傍点]は、社会が所有する一種の財産(文化財とも呼ばれる)の性質を持っているのである。今この財産の所有関係[#「所有関係」に傍点]から、科学を見よう。
エジプトやインドに於ては、科学乃至学問(一般に文化が凡てそうなのだが)は僧侶階級のものであった。僧侶は云うまでもなく支配階級にぞくする。古代支那に於ける学問も亦、主として支配者――君子・士大夫――のものであった。ギリシアの科学乃至哲学は比較的大衆化された所有者を発見したが、併しそれにも拘らず、奴隷経済の上に立つ支配者自由民のものであったことは云うまでもない。ヨーロッパの中世には僧侶と貴族との科学しかなかった。このようにして、元来、科学(一般に文化も亦)は決して人類全般、社会全般のものではなくて、或る特定の而も支配的な社会階級乃至社会身分の、占有物だったのである。
無論科学は時代の常識的平均を踏み越えようとする努力を含んだものであるから、どんな能力の人間にでも向
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