ニしての歴史的なニュアンスを持ってるのに反して、所謂科学方法論(メトーデンレーレ)の方(但しそれを却ってメトドロギーと名づけてもいいのだ)は、少なくとも従来の形式論理学を何等かの形で踏み越えようとする立場(「先験的」論理学・「内容的」論理学・「具体的」論理学・「近代」論理学・「認識論」・等々)に立つという、歴史的には新しい又進歩した段階のものだ、という区別である。
 例えばフランシス・ベーコンの所謂研究法(その帰納法)は、近世の自然科学の方法を論じようとしたものであるにも拘らず、結局従来の所謂論理学の単なる一部分にしか過ぎなくなっている(帰納論理学)。後に之とスコラ哲学以来の所謂演繹論理学とを結合して、特に社会科学(Moral Science 乃至 Social Science と呼ばれた)の方法を精細に論じたJ・S・ミルの労作も、必ずしもまだ「科学方法論」になり切ったものではなく、つまりは形式論理学に於ける「方法論」の大成に過ぎないという様な位置を与えられている*。なぜなら之は本質上、ベーコン的方法論をそのまま社会科学に持ち込んで単に之を比較的精細に考察したものに他ならないからである
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