フ物理学的な意味だろう。だが生物[#「生物」に傍点]は之とは別な意味に於て、個体の性質を持っている。生物の個体は物理的にはいくらでも分割出来る。細胞は更に原形質や核や染色体や細胞膜其の他に分割できる、等々。だがそれにも拘らず、之は生物学的に一個の不可分な個体、オルガニズム[#「オルガニズム」に傍点]なのである。オルガニズムに於て不可分と考えられるものは、もはや単なる物質乃至物体ではなくて、高度に発達[#「発達」に傍点]した物質の合成による生命[#「生命」に傍点]なのだった。
 生命の概念に就いては、機械論[#「機械論」に傍点]と生気論[#「生気論」に傍点]との対立が、或いは非全体説と全体説[#「全体説」に傍点]との対立が、有名であるが、この矛盾の克服は全く、生命現象に対する唯物弁証法の役割による以外に道を残さない。ここでも亦、神秘説と機械論とを止揚統一するものは自然弁証法なのである*。元来生命それ自身がディアレクティッシュなものなので、新陳代謝や疾病治療や、出生死亡等の現象が、常識的に之を告げている。
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* この点に就いては拙稿「生物学論」(岩波講座『生物学』の内)〔本全集第三巻所収〕に多少詳しい。――なお之及び之以外の領域に於ける自然弁証法の諸問題に就いては、拙稿『イデオロギー概論』及び同じく『現代哲学講話』〔何れも前出〕の中の当該項を参照。
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 併し物質の第一規定が運動[#「運動」に傍点]であったことを、今思い起こさねばならぬ。と云うのは、物質は変化発展転化するのであった。之こそ物質そのものの弁証法、自然そのもの[#「自然そのもの」に傍点]の弁証法、の第一義的な場合でなければならなかった。宇宙は天体から地球、地球上の諸物質や諸生物(更には人間社会もそうだが)を含めて、時間的過程[#「時間的過程」に傍点]である。宇宙は、物質は、自然は、この歴史的運動[#「歴史的運動」に傍点]をその根本法則[#「根本法則」に傍点]としている。自然の歴史的運動こそ、自然弁証法の最も根本的で最も代表的な場合に他ならない。
 時間[#「時間」に傍点]はここに特別な意味を有って来る。時間は哲学者によって様々に考えられている。心理的時間、人間史的(歴史学的)時間、神学的時間、そして物理学的時間。だがこの内根源的なものは最後の
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