[#「すべからざるか」に傍点]」という論文もあるが、独りマルクス主義文献の引用に限ったことではない。寧ろ今日ではそうした引用はマルクス主義的論争に於ては過去のものとなった。引用の非科学性が色々の複雑な形で現われるのは今日では他の世界に於てである。私は実は夫を検討したいのだ。
科学的に意義を有つ引用はまず右に述べた公式としての引用であったが、之をもっと一般化して考えると、之は実は典型的、代表的、な所論の文章を引用することに他ならない。それが今或る事物について考察を企てようとしている私なら私にとって、賛成すべきものであろうと、又反対なものであろうと、とに角沢山あるものから代表者[#「代表者」に傍点]として択ばれたものが、引用に値いするのである。そう考えると、この型式の引用なるものは、極めて広範な領域を占めるもので、元来賛同意見と反対意見との夫々の代表的なものを引例することによって、自分の論旨を裏表から直接間接に証明するディアレクティックな方法は、理論の欠くことの出来ない実質をなす。引用はまず第一に、このような証明の方法[#「証明の方法」に傍点]という意義を持っている。
だが第二に、引
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