科学と科学の観念
戸坂潤
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)分科の学問[#「学問」は底本では「学門」]
−−
現在の時局は、文化の観点から云えば勿論のこと、文化以外の観点である軍事や生産技術の観点から云っても、科学の時代である。科学という観念が、尊ばれ流行し又親しまれている。科学という字が読書氏や政客や為政者の身近かに、或る関係を持つものとして現われて来た。曾て「文学する」という云いまわしが文壇の若い層で、短い時間口にされたことがあるが、今日では「科学する」という云いまわしさえ現われている。いやすでに「哲学する」という言葉もあったから、あまり不思議がることはないのである。科学という字は、分科した学問という意味を有っていたと思うが、この成語の名詞が動詞となったことは、大変面白い。
けれども今日の科学崇拝は、一体何を崇拝しているのであるか。云うまでもなく科学を崇拝しているのである。だが一体科学とは何であるのか。但しそう云っても、私は科学概論や科学論の上での一定の立場を尋ねているのではない。一体科学に対してどういう
次へ
全10ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング