」に傍点]除かれることが出来るということは謂われ得るであろう。之を要するに吾々の実在認識の最高課題は事実を統一する合法則的な順序を見出すことである。即ち一般的な命題を見出すことである。而もかかる一般的な命題はただ吾々が全体的世界形像と呼ぶ処の、実在の関係をある一定の「概念的な材料」の内で考えることによって始めて可能である。即ち空間表象や又はある範囲では時間表象を除き去った客観的に実現されたものとしての時間及び空間からなる処の時空世界形象によるのでなければならぬ。而もかかる時空形象は座標と云うが如き抽象的な概念によって置き換えても何の変りもある筈はない。それ故実在は厳密に数学的な概念によってのみ理解し得るであろう。
 カントが時間及び空間を吾々に固有な性質によって与えられた表象形式でありそしてそれに特有の性質によって一義的な必然的に明白な命題が成立すると説いた事は反対すべくもない。併し近代の科学に於て変更された処は実在的[#「実在的」に傍点]な対象の空間的な秩序や実在的[#「実在的」に傍点]な出来事の時間的な秩序を認識する仕方にあるであろう。即ち相対性原理の教えるように吾々は客観的に与え
前へ 次へ
全25ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング