あるであろう。之に反して「地球の回転は時の経つに従って其の速さを変えるか」に就いてのベルリン・アカデミーに提出された懸賞論文はカントの独創的天才を示すものである。カントによれば月及び太陽の引力によって引き起こされる潮の満干の運動が地球の回転の速さを緩める事が明らかとなる。たとえその計算があまり厳密ではなかったにしても、又たとえ速さがこの外の更に多くの原因によって緩まるということをカントは注意しなかったにしても、カントが簡単な疑うことの出来ぬ力学的関係の考察から出発したという点での此の論文の価値は依然として変るものではない。さて自然科学者としてのカントをして最も有名ならしめるものは「一般自然及び天体論」に述べられた所謂カント・ラプラス仮説である。凡ゆる遊星は略々同一平面の内に同一の方面を以て運動し太陽も又この平面に垂直な軸の回りを同じ方向に回転するが、カントによればかかる偶然とも云うべき一致は太陽と遊星とが本来空間に拡っていた同一の物質であり、後に至って始めて分離したものであるということを示すに外ならない。勿論カントが太陽系の成立を説明して引力と排力とが密度の大きい多数の塊を造り同時に又
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