謔チて代わらせたり、後者を前者に強制的にあてはめたりすることが出来る。社会組織の問題が国学によって決定されたり、弁証法が完全に華厳経にあったり何かするのである。
 社会的発生学と歴史的系譜学とを有つ(イデオロギーに於ける)哲学範疇――だが夫は実はすでに範疇体系[#「範疇体系」に傍点]である――は、唯物史観によって、更に階級性[#「階級性」に傍点]の別を与えられる。欧洲哲学的範疇は同時に現代に於ける東洋にも通用せねばならぬ処の範疇である。吾々はこの範疇体系を日常選択することによってのみ、電車を動かし、ラジオを聴き、経済生活をなし、政治生活をなす。なぜならこの範疇は科学的範疇[#「科学的範疇」に傍点]に一続きなのがその特色だからである。処が人々は、或る階級イデオロギーを組織するために、是非とも、例えば国民道徳[#「国民道徳」に傍点]というような一定の領域に限って、特に東洋哲学的な――それは結局国粋的[#「国粋的」に傍点]な――範疇体系を選ばねばならぬ。そうなると、今までは単に歴史的[#「歴史的」に傍点]な反動でしかなかったこの範疇選択は、実は階級的[#「階級的」に傍点]反動――ファシズム[
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