オロギーは、歴史的社会の何時の時期にも必ず意味を有つ存在でなければなるまい、意識を有たない社会は存在し得ないからである。だがイデオロギー形態としてのイデオロギーは、或る一定の社会条件の下では対立物として対立しないと考えられるならば、その時にはもはや意味のない概念となるだろう。一種類しかイデオロギーのあり得ない――そうした理想的な――社会に於ては、イデオロギーの諸形態[#「諸形態」に傍点]という概念は意味を失って了う。――で、イデオロギーとは、イデオロギーという一つのものが、幾つかの対立物に分裂し、そして又その対立が一つのものにまで解消することを理想とする、そういう弁証法的な概念である。ここにイデオロギー概念の一切の諸特性が潜んでいる。
唯物史観によれば社会の下部構造――生産諸関係――は経済的搾取関係によって特色づけられる。要するに余剰価値乃至利潤の追求がこの下部構造を規定する。だからこの経済的[#「経済的」に傍点]関係と直接に結合している社会的[#「社会的」に傍点](その限り又政治的)関係としては、社会階級の対立[#「社会階級の対立」に傍点]が結果する。その意味に於て社会の下部構造
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