学が優れて革命的であるに反して、実証科学がそれ程に革命的――弁証法的――でない所以である。寧ろ之は改良主義的な外貌[#「改良主義的な外貌」に傍点]を有つことも出来るだろう**。――この区別は決して軽視すべきではない。
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* 哲学の著しい政治的性格・党派性は、この螺旋の切線のヴェクトルを考えて見ることによって、画に書くことが出来る。例えば螺旋内の観念論という一点に於ける切線のヴェクトルは、唯物論という一点に於ける切線のヴェクトルと方向が正反対であるが、前者のヴェクトルをそのまま後者のヴェクトルの上にまで平行移動させれば、前者は茲に反動的な役割を持って来る。――この平行移動を時代錯誤[#「時代錯誤」に傍点]という。
** この点に就いては曾て分析を試みた(拙著『イデオロギーの論理学』一五三頁【本巻七二ページ】以下)。
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併しこの区別、螺旋型と直線型、革命型と改良型、この区別は、決して絶対的なのではない。何故なら、直線型の曲線も任意の適当な部分を限界すれば、その内では螺旋型をなし、改良型と見えた全体も之を任意の適当な部分に区分してその部分内で見る限り、革命型をもつことが出来る、というのが、実証科学の歴史的発展の実際なのであるから。両者は同じく[#「同じく」に傍点]弁証法的に展開する。ただ夫々異った[#「異った」に傍点]条件の下に弁証法的であるに過ぎない。人々はかくて両者の区別を――その弁証性の区別をも――絶対的にではなく、正に弁証法的に理解すべきである。――この時哲学と実証科学とは初めて有機的に媒介されることが出来る(単なる区別はまだ少しも媒介ではない)。実証科学をそれだけで全体だと[#「それだけで全体だと」に傍点]見るならば、それは非弁証法的とも考えられる――数学や物理学はその意味で形式論理のものだと考えられる。かくて実証科学は弁証法的な哲学から絶対的[#「絶対的」に傍点]に区別されるだろう。之に反して之をそれを含む全体に於て[#「それを含む全体に於て」に傍点]見るならば、実証科学は哲学と同じく弁証法的でなければならぬのである。実証科学の非弁証性は哲学の弁証性の、弁証法的な意味に於ける部分となる。――哲学と科学とはこのような特定な意味に於て弁証法的統一を有っている(自然弁証法が問題になるのは取りも直さずこの点に於てである)。
さてこう考えると、今云って来たような哲学が、恰も形而上学[#「形而上学」に傍点]の反対物であることを人々は気付くだろう。何となればこの哲学の性格は弁証法[#「弁証法」に傍点]にあったのだから。そこで、吾々は前に宗教・神学を問題外に追放したが、今度は形而上学をも追放しなければならなくなる。形而上学とは、もはや一つの独立[#「独立」に傍点]な知識の種類ではなくて、弁証法的な知識に対する不完全[#「不完全」に傍点]な知識に過ぎなくなったのだから。今や、形而上学は、もはやシェーラーに於てのように哲学を代表することは出来ない、それは哲学の新しい代表者たる弁証法の反対者として、積極的に追放されねばならなくなった。かくて純粋に単なる哲学――もはや形而上学ではない処の――と実証科学とが残される。その両者が処で、特定な意味に於て弁証法的統一をなしたのであった。――哲学と実証科学とを絶対的に区別することが如何に無意味であるかを知るためには、人々は一寸、社会科学のABCをのぞいて見れば充分だろう。一体社会科学は哲学ではなくて科学であるのか、又は科学ではなくて哲学であるのか、そして社会科学のどこまでが科学であり何処からが哲学であるのか。
シェーラーの絶対的な三種の知識の区別は、このようにして止揚される。
コント流の知識三段階説に対するシェーラーの批判は無力に終ったかのようである。啓蒙期フランスの思想の一変容である実証的精神[#「精神」に傍点](esprit)は、人間的理性の過信・歴史的不合理性の否定・であり、之に反してドイツ的「精神」(Geist)は歴史の尊重を意味する、と普通考えられないでもないに拘らず、茲では関係が逆になって現われる。知識[#「知識」に傍点]が真理へ接近する過程に於て歴史[#「歴史」に傍点]が受け持つ役割は、少くともコントに於ては実証科学への推移として受け入れられているが、之に反してシェーラーに於ては却って斥けられる。真理[#「真理」に傍点]に対して歴史が持つ決定力、歴史的原理[#「歴史的原理」に傍点]は、シェーラーにあっては問題となることが出来ない。コントの思想自身がシェーラーによれば、歴史的発展段階[#「歴史的発展段階」に傍点]に相応するものでなくて、却って云わば何等か地理的分布[#「地理的分布」に傍点]に関わるもののようである。実
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