ることを意味する。立場の概念にこのような終局的価値を与える処から、かの水掛論が成立したのであった。併し之は一つの理論的な――必ずしも論理[#「論理」に傍点]的ではない――罠に外ならない、それはこうである。
 人が或る立場――例えば絶対主義――を採るに際して、彼がその根拠として、基礎[#「基礎」に傍点]として示す処の、自己の立場の完全無欠の整合なるものは、実は[#「実は」に傍点]、彼をしてこの立場を採らしめた真の動機[#「動機」に傍点]ではなかったのである。立場の整合は必要な条件としておかなければならないが、その上で、二つの立場――例えば絶対主義と相対主義――の何れを選ぶかを決定するに足る現実的な動機は、実は[#「実は」に傍点]、単に立場の整合であったのではなくして――整合としてならば二つの立場は等しい資格を有つ筈であった――、他の何物かであったのである。立場としての立場、整合――彼はそれを理論の基礎[#「基礎」に傍点]として示した――が終局的[#「終局的」に傍点]なるものであったのではなくして、実は[#「実は」に傍点]、何か立場以外のものが、従って今のことから、それ以前に[#「それ以前
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