であり、従って又初めて道徳的な自由意志の内容ある概念が成り立つことをえる。
[#ここで字下げ終わり]
時代の歴史的運動は事物の又人々(個人)の性格を規定する。事物の性格と人々の性格とが相関的である所以が之である。性格の把握の正誤はただ、歴史的運動を標準として、この規範に従って、のみ与えられるであろう。
私は問題を進めよう。時代の歴史的運動、それに寄与する動力因子として時代の又事物の性格が取り出されるのであるが、時代のこの歴史的運動を、その実際の歩みを、吾々は如何にして見出すか。時代の歴史的運動こそ事物の性格を決定する規範であったが、この規範は如何にして見出されるか。時代は何へ向って動きつつあるか、何が時代に於て歴史的・必然的に支配的であろうとしているか、時代の性格は何か、この問いに対して吾々は何を根拠として答えることが出来るか。――そこには社会[#「社会」に傍点]がある。
時代の性格は――時代の歴史的運動は――社会[#「社会」に傍点]現象を地盤として実践的[#「実践的」に傍点]に把握出来る。それは個人的な思弁や隠遁的な思索や又地方的な眼界を以てしては、遂に把握することを許されな
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