性格は個別化原理から完全に独立であり、そして通路を有っている。私はこの二つの点を指摘して個性概念との混同を防いでおこう。
 さて併し性格とは何か。
 日常吾々が接する具象的な事物は恐らく無限な数の性質を持っているであろう。事物はこれ等の性質の統一としてある。夫々の性質はそれに特有な作用の範囲を与えられている。というのは或る性質は顕著であり之に反して他の性質は著しくない、と考えられる。事物が含む云わば一〇〇の内容を、夫々の性質は幾つかずつ分け占めていると考えられる。かくて例えば神は全知全能という特質によってその内容の大部分を分け占められると考えられる。併し或る事物に就いて何が顕著であり何が顕著でないかは決して事物それ自身だけによって決定され得ることではない。或る視角から視れば甲性質が又他の視角から視れば乙性質が顕著なものとして現われる。他の事物には無くただその事物にしか見出されないような或る性質は――たといそれが微弱であっても――顕著となることが出来、強大な性質であっても、それが多くの事物と共通であるならば顕著でないと考えられることが出来る。又事物の某性質――それが強大であろうと微弱で
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