ホれることが出来る筈であるが、今の場合の真理典型に於ては特にそれが最勝義に於て論理的である、と云うのである(但しそれであるからと云って、夫が最勝義の真理[#「真理」に傍点]だということにならないことを注意せよ)。併しこの形式的な真理は、それが形式的原理にぞくする限り、人々の想像する処とは異って、内容的な真理と呼ばれるべきものの性質を決定するに正当な資格を欠いている、その推論は前を見れば好い。内容的真理はこの独立な[#「独立な」に傍点]形式的真理への外面的な付加・※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]入であるのではなくして、却って後者が前者からの抽象としてこそ、初めて連帯的[#「連帯的」に傍点]に理解されることが出来る。世界観のもつ真理典型――夫は内容的である――は、論理学風な形式的真理典型へ、感情や意志の内容を後から付加・※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]入したものではない。世界観に含まれると考えられる情意内容は単なる感情や意志ではなくして、それ自身の内に在る或る意味の論理によって、その真理性を保証されているものである。この論理は純論理的なるものの恩沢によって初めて論理的となり得たのではない、それは純粋論理ではなくして内容的論理である。かかる内容的真理典型を初めに把握しておいて始めて、夫からの一面的抽象としてその内に含まれていたと解釈出来る純論理的整合[#「整合」に傍点]を取り出すならば、それが取りも直さず形式的真理典型であるのである。逆に後者から出発して前者に就いて云々し得ると想像するならば、それは結果を以て動機を決定する処の虚偽であるであろう。――さて真理概念に就いては夫から出発せねばならない内容的真理典型、――之を有つものは例えば歴史的諸科学である(前を見よ)――之を私は性格的[#「性格的」に傍点]真理と呼ぶことが出来る。之に対して、形式的真理を没性格的[#「没性格的」に傍点]と呼んで好いであろう。そこで吾々が取り扱うべき唯一の正当な真理概念は、今や性格的真理に於ける真理形態[#「性格的真理に於ける真理形態」に傍点]という資格を帯びて来る。実際、性格的真理に就いてでなければ吾々が真理形態[#「形態」に傍点]を口にする理由はなかったであろう、形態とは元来、特殊の資格を有った性格概念であったのだから。虚偽に就いても亦同じく性格的虚偽が今の場合の対象でなければならない。それ故今や、吾々の課題は、性格的論理に於ける論理形態[#「性格的論理に於ける論理形態」に傍点]、を媒介として解かれるべきである。
[#3字下げ]二[#「二」は中見出し]
性格的論理に於ける――没性格的論理は今の問題ではない――論理形態は、真理乃至論理の理念からは決定出来なかった。そうかと云って単なる個々の真理内容からも決定出来なかった。論理に対する他事物[#「他事物」に傍点]として、而もより具体的な論理的内容によって、夫は決定され得る筈であった。今それを見よう。
性格的論理に於て用いられる諸概念[#「概念」に傍点]は必ずその性格を有つ。例えば或る事物を何と命名するかは没性格的・形式的・論理にとっては全く任意の事にぞくするが、性格的論理にあっては、その任意さの間にすでに人々がそれをどう待遇しようとするかという意図が示されているであろう。概念の成立には一定の動機[#「動機」に傍点]があり、この動機から云って是非ともこの[#「この」に傍点]概念が採用されねばならなかったのである。概念の性格はこの動機によって成り立つのであり、かくて一定形態の諸概念が出来上る。概念の形態はそれ故、この動機によって決定されるものである。性格的真理を持つ諸科学に於て、術語が定義し得られず従って又一致を欠くのを常とするという事実は、この点から説明されるであろう。蓋し動機は自らを云い現わし尽すことが出来ない性質を有つからである。――それであるから概念の性格はすでに判断[#「判断」に傍点]の仕方を予想せしめる、諸判断はこの時すでに一定の形態を取るべく予定されているのである。事実、判断の形態は概念の形態の展開であり、後者の性格が具象化されれば前者の性格となると考えられているであろう。かくて諸判断の性格・その形態は、又一定の動機によって決定されるものなのである。――推論[#「推論」に傍点]はこのような判断形態を云わばその性格に就いて積分したものと云うことが出来る。推論も亦一定の意図の下に動機せしめられる。実際人々はまず予め一定の帰結を有つことを欲し、そのために適当な前提を選択する。もしこの前提で期待した帰結が得られなかったならば、改めて他の適当な前提を求めるであろう。そして万一どうあっても適当な前提を見出すことが出来ない時
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