閧ナあっても差閊えがない性質をもっている。さて彼がこのような特殊[#「特殊」に傍点]の問題を捉える時、それを解決するために、おのずからそれに特有[#「特有」に傍点]な立場をとるであろう。生物の問題を提出すれば生物学的立場が要求され、物体の問題を提出すれば恐らく物理学的と呼ばれてよいような立場が要求される。問題の提出は直ちに問題の解決への道なのであり、この道の自覚がとりも直さずその解決に適わしい立場なのである。かくて一定の[#「一定の」に傍点]問題は一定の[#「一定の」に傍点]立場を要求する。問題の解決が何かの立場を要求することは特に茲に言うまでもないことであるかも知れない、ただ大事なことは、一定の問題がそれに特有な一定の[#「特有な一定の」に傍点]立場を要求する、ということである。処で今立場という概念の性格に就いて注意すべき一つの点がある。立場は、かりにそれが特有な一定の[#「特有な一定の」に傍点]――それは根本的なものには限られなかったから少くとも全般的ではない[#「全般的ではない」に傍点]――立場であるにしても、立場であるからには常に全般的[#「全般的」に傍点]な意味を有たねばならない性質を有つ。特殊[#「特殊」に傍点]な立場も立場である以上は一般[#「一般」に傍点]に通用して好かるべき筈である。立場はそのような性格をもつ概念でないであろうか。かくて立場概念のこのような弁証的性格は特殊的な立場をば常に、普遍的な立場にまで転化せしめるのである。初め立場を特殊な立場であらしめた動機は然るに、問題の特殊性――問題は特殊であることの出来る概念であった――の外にはなかった。故に云うことが出来る、問題[#「問題」に傍点]が立場[#「立場」に傍点]へ移行する時、特殊[#「特殊」に傍点]は常に普遍[#「普遍」に傍点]化せられるのである、と。
問題なるものは元来固定したものではない。というのは問題はその性質上次々の問題を呼び起こすことが出来る。それ故問題はそれ自身の成立に於て他の問題へ運動するという特色を有っている。問題は他の諸問題を展開するものである。それ故特殊の問題であっても――即ちかの形而上学的根本[#「根本」に傍点]問題でないにしても――、枢要な他の諸根本問題を展開する糸口となることの出来る場合はあるかも知れない。この場合であるならば、問題が立場へ移行することによって、
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