持ち込まれ、重大さに於て質的な相違ある二つの要素を量的に――同格に――並立するかのように取り扱い、偶然なるものを必然であるかのように強い、本質的なるものと非本質的なるものとを混同し、事物の正面と側面とを捉え違える等々、一言で云うならば事物の性格[#「性格」に傍点]は――意識的にか無意識的にか――取り違えられるであろう(元来事物の性格は――その理解は――歴史的条件に基いて時代々々によって必然的に一定している、従って性格を把握しちがえることは、時代錯誤[#「時代錯誤」に傍点]の代表的なるものなのである)、理論の策略[#「策略」に傍点]から云って、事物の性格をこのように取り違えることが事実必要であったのである。かくて性格の蹂躙は、苦肉又は常套の、苦しき又は尤もらしき、奇矯又は俗流の、理論の権謀[#「権謀」に傍点]の条件となるためのものなのである。所謂政策に訴えなければならなかった歴史的状勢はこの没落的契機を、理論に於ける権謀性[#「権謀性」に傍点]として反映する。之が求める処の虚偽形態であった。――無論この権謀性は、政策が真理から離反した利害として、論理外の勢力となって働く処から由来する。併しこの利害が利害として、即ち権謀が権謀として、意識されないことを、それは妨げない。もし夫が意識されるならば、権謀は今や欺瞞[#「欺瞞」に傍点]となる*。かの歴史的状勢は今や、理論に於ける欺瞞性[#「欺瞞性」に傍点]として反映する。――蓋し理論のかの停滞性及び矛盾性(被批判性)を蔽うためには、事実、権謀乃至欺瞞の虚偽形態が必要となって来るであろう。
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* 虚偽が意識的であるかないかは、云わば良心[#「良心」に傍点]に相対的ででもあろう。人々はこの区別に深く執着すべきではない。
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 台頭的契機に於ける政策は之に反して、事物を歪曲する必要も余地も有たない。何となれば、一方に於て、台頭的契機は歴史的運動の必然性に従うものの謂であり、他方に於て、この場合の政策――政治――は歴史的運動に従う実践的変革を意味するのであったからである――前を見よ。政策と台頭的契機に於てあるものが一致するからである。茲に於ては政策が事実の最も正直な把握であることが出来、またそうなければならない。さて台頭的契機から動機された理論は、それであるから、同じく台
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