驍ラき定位を割り出す場合の原理を、それは意味するであろう。処がこの仕方はとりも直さず先程から排斥している形式主義の外ではないのである。形態概念はそれ故、この形式から内容への形式主義的進行の原理――個別化原理――から引き離して理解されるべきである。形態は典型ではない*。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
* 典型[#「典型」に傍点]・個性[#「個性」に傍点]、等々の概念は、形式的原理にぞくする処の個別化原理に基く。之は夫々、形態[#「形態」に傍点]・性格[#「性格」に傍点]、等々の概念から区別されねばならない――性格に就いては次を見よ。
[#ここで字下げ終わり]
 形態の概念は性格[#「性格」に傍点]の概念と関係している。一般に、事物の容積ある内容を、内容として、即ち内容的に[#「内容的に」に傍点]――形式的にではなく――把握する通路を、性格と呼ぶことが出来るであろう。事物は一般に、性格という理解の通路に沿うて、初めて一定の性格を有つ事物として、その容積ある内容を捉えられる。そうしなければ事物の容積は平面に還元され、事物の優越なる性格が凡庸化され、内容は形式化されて了うであろうから。一般に、事物の内容をして内容として捉えさせるものが性格であり、そして又かくして捉えられた事物の内容が、その事物の性格なのである。性格とは内容的に把握されたる限りの内容である。事物の内容の容積をなしている内容的・現実的・質料的・原理を担ったものが性格に外ならない。個々別々の事物も亦、それ故、その内容が把握された限り、個々別々の性格をもつ。処が恰も形式論理学に於ける概念が外延―内包の関係によって種概念と類概念との上下の系列をもつと同じに、事物の性格も亦段階的系列をなすことが出来る。諸事物の性格は、一定の一事物のもつ一性格の下に、時間的推移に於てか並立的同時存在に於てか、統一され得るものである。さて下位の性格に対して、相対的に上位に位する性格が、形態[#「形態」に傍点]の概念であるのである。形態は、個々事物の内容を、何等か総体[#「総体」に傍点]として、而も依然現実内容[#「現実内容」に傍点]として、捉える処の、通路である(形式的な総体は一つの理念であり、従って現実内容とは無縁であった)。
 形態[#「形態」に傍点]と形式[#「形式」に傍点]とはそれ故もはや一つではない。一般的形式は内
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