き病床に床ずれあらざれと願うなるべし。箱の内は何ぞ。莎縄《くぐなわ》を解けば、なかんずく好める泡雪梨《あわゆき》の大なるとバナナのあざらけきとあふるるまでに満ちたり。武男の心臓《むね》の鼓動は急になりぬ。
 「手紙も何もはいっていないかね?」
 彼をふるいこれを移せど寸の紙だになし。
 「ちょいとその油紙を」
 包み紙をとりて、わが名を書ける筆の跡を見るより、たちまち胸のふさがるを覚えぬ。武男はその筆を認《したた》めたるなり。
 彼女《かれ》なり。彼女《かれ》なり。彼女《かれ》ならずしてたれかあるべき。その縫える衣の一針ごとに、あとはなけれどまさしくそそげる千|行《こう》の涙《なんだ》を見ずや。その病をつとめて書ける文字の震えるを見ずや。
 人の去るを待ち兼ねて、武男は男泣きに泣きぬ。
       *
 もとより涸《か》れざる泉は今新たに開かれて、武男は限りなき愛の滔々《とうとう》としてみなぎるを覚えつ。昼は思い、夜《よ》は彼女《かれ》を夢みぬ。
 されど夢ほどに世は自由ならず。武男はもとより信じて思いぬ、二人《ふたり》が間は死だもつんざくあたわじと。いわんや区々たる世間の手続きをや
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