上なる灰皿にさし置きつつ、腕を組みぬ。
山木は踏み込めるぬかるみより手をとりて引き出されしように、ほっと息つきて、額上の汗をぬぐいつ。
「さようでございます。実もって申し上げにくい事でございますが、その、どうかそこの所をあしからず――」
「で、武男君はもう帰られたですな?」
「いや、まだ帰りませんでございますが、もちろんこれは同人《ほんにん》承知の上の事でございまして、どうかあしからずその――」
「よろしい」
中将はうなずきつ。腕を組みて、しばし目を閉じぬ。思いのほかにたやすくはこびけるよ、とひそかに笑坪《えつぼ》に入りて目をあげたる山木は、目を閉じ口を結びてさながら睡《ねぶ》れるごとき中将の相貌《かお》を仰ぎて、さすがに一種の畏《おそ》れを覚えつ。
「山木|君《さん》」
中将は目をみひらきて、山木の顔をしげしげと打ちながめたり。
「はッ」
「山木|君《さん》、あなたは子を持っておいでかな」
その問いの見当を定めかねたる山木はしきりに頭《かしら》を下げつつ「はッ。愚息《せがれ》が一人《ひとり》に――娘が一人でございまして、何分お引き立てを――」
「山木|君《さん
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