道の神居古潭で中秋に逢《あ》うも、他日の思出の一であろう。雨戸を少しあけて見たら、月は生憎《あいにく》雲をかぶって、朦朧《もうろう》とした谷底を石狩川が唯|颯《さあ》、颯《さあ》と鳴って居る。
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      名寄

 九月十九日。朝|神居古潭《かむいこたん》の停車場から乗車。金襴《きんらん》の袈裟《けさ》、紫衣《しえ》、旭川へ行く日蓮宗の人達で車室は一ぱいである。旭川で乗換《のりか》え、名寄《なよろ》に向う。旭川からは生路である。
 永山《ながやま》、比布《ぴっぷ》、蘭留《らんる》と、眺望《ながめ》は次第に淋しくなる。紫蘇《しそ》ともつかず、麻でも無いものを苅って畑に乾《ほ》してあるのを、車中の甲乙《たれかれ》が評議して居たが、薄荷《はっか》だと丙が説明した。
 やがて天塩《てしお》に入る。和寒《わっさむ》、剣淵《けんぶち》、士別《しべつ》あたり、牧場かと思わるゝ広漠《こうばく》たる草地一面|霜枯《しもが》れて、六尺もある虎杖《いたどり》が黄葉美しく此処其処に立って居る。所謂|泥炭地《でいたんち》である。車内の客は何れも惜しいものだと舌鼓《したつづみ》うつ。
 余放吟し
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